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機内に入るとチケットを片手に座席に向かう。

「45A・・・・・か。」

つぶやくと同時に深いため息も漏れる。男の習慣から言えばこの座席番号はあり得ない。

到着時、いち早く機外へ出ることができる”前方の通路側”が彼にとっての特等席なのだ。

機内荷物をキャビネットに押し込む人々で通路はすぐ遮断され、そう簡単に最後部の45Aにはたどり着けない。

やっとのことで座席にたどり着くと男はシートに深く身を預けた。

程なく、意識は暗闇に遠のいていった。



どれくらい眠ったろうか。

目覚めると隣席に人の良さそうな年配の婦人が老眼鏡越しに文庫本に目をやっている。

そして男はハッと気づいた。

「す、すいません。熟睡してしまったもので」

眠っている間、男の両足が思い切り左右に投出されおかげで婦人の足のやり場がほとんどなかったのだ。

「いいんですよ。かなりお疲れのようですね。」

「いや、本当に申し訳ありません。」

婦人は笑顔のまま、視線を読みかけの文庫本へ移す。

男は姿勢を正し直し、視線をめったに見ることのない窓の外へと向けた。



「こいつは・・・・。」

男は足下のバッグからGXRを取り出す。

50mmのユニットを慣れた手つきでボディにセットする。

カチッという音が男の五感に心地よく響いた。

「窓の外、きれいね。お写真撮りたくなるお気持ちわかるわ。」隣の婦人が笑顔を向けた。

「ええ、こんな景色があるなんて知りませんでした。」

男は窓の外にレンズを向けると静かにシャッターを切った。


雲の上2
(GXR 50mm f2.5 1/1000) GRBLOGトラックバック企画「目覚め」に参加



















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